RIVER
Report of Intern about Venture business and Entrepreneur in Ritsumeikan
株式会社生田グローバル 喬社長
京都国際観光大使(京都市任命) ,京都府名誉友好大使(京都府任命)。 2003年に来日、京都在住10年以上、京都の大ファン。 現在、日中、日越間の往復生活を送り、草の根レベルで文化・経済交流活動をしている。2018年生田グローバル株式会社代表に就任。
1.事業内容
私たちは大学生、経営者をターゲットとしたコミュニケーション事業を展開しています。大学生の方向けには、グローバルベンチャーコンテストを開催して、参加してくれる学生さんのリーダーシップとアントレプレナーシップの育成を行っています。経営者の方向けには、海外研修事業を展開し、グローバルなビジネスマッチングをサポートします。また最近では、外国人のコミュニティづくりを企画・開催しています。起業に関心のある外国人の日本語学習支援から、京都のいろんな経済団体の専門家によるセミナーの開催まで、起業を支援できるような体制を作っています。
2.起業のきっかけ
もともと僕は留学生として日本にやってきましたが、当時は留学生と日本社会の接点があまりなかったです。そのため、初めはなかなか日本語が上達しませんでした。京都に来て2年目でようやく京都の生活に慣れ、留学生を集めて、中国に向けて京都の観光情報や日本文化をブログで配信していました。その延長として、もっと留学生と日本社会の接点を作りたいと考え、ソーシャルビジネスを始めました。もともとは、留学生がどのようにして日本社会に入るのか、そして留学生が見た京都と外国人から見た日本、を海外に伝えるという目的のサークルを立ち上げました。2009年の大学卒業後に、本格的なビジネスを始めるようになりました。留学生の先輩がすでにそういったビジネスを手掛けていたので、 一緒に京都でのビジネス展開をしたいとリクエストして、京都オフィスを立ち上げました。大学生の交流事業では、はじめは修学旅行のプランを企画しました。京都で一週間滞在し、日本の大学で模擬体験や授業を受け、最後に日本人と交流するというプランを中国に販売しました。最初の頃のツアーはすべて日本語で行い、我々が通訳をしていましたが、だんだん依頼が増えると、英語での実施に変わり、対象も中国以外に、ベトナムやマレーシア、韓国などに拡大しました。一見順調に見えますが、京都の学生向け交流事業は上手くいかず悩みましたね。どうしようかと悩んだ時に、一人の京都の経営者の方と知り合いました。その方に経営のいろはを教えてもらおうということで、いったん再就職をしました。今は二回目の起業です。その会社は中国の経営者をたくさん受け入れている産業観光を行っている会社ですので、経営者とのつながりができました。中国人経営者が日本の会社の見学を希望されたことがきっかけとなって、そのニーズに答えるために、産業観光ツアーを企画して、2015年の春ごろに開催しました。2018年には法人化し、独立して、いまに至りますね。
3.起業して苦労したこと
当時はこのような教育ツアーはまだ少なかったので、理解してもらうのに苦労しました。売れると確信していたプランでしたが、なかなか市場のニーズと合わなかったですね。このような内容で実施したいのですが、学生さんを送ってもらえませんかと中国の大学にお願いしても、当時まだ実績がなかったことに加えて、プランの内容を理解してもらえなかったため、なかなか実行に辿り着けなかったですね。
4.困難を乗り越えるときに工夫したこと
いかに京都の魅力を伝えるのか、そして学生に面白いと思ってもらえるか、という点を常に念頭に置いてプランを考えたことですね。例えば、最初に考えたのは、長期休暇中の空いている大学のキャンパスを借りて、模擬授業を行って日本の大学生と交流したり、日本の文化をより理解できて楽しめるような文化体験を企画していました。当時はこのように日本をもっと理解してもらえる、さらに楽しいツアーを考え、中国国内に販売しました。
5.一番印象に残ったこと
一番印象に残っているのは、初めてのツアーである深セン大学の学生ツアーですね。当時はまだ2012年なので、日本に留学する外国人が少なかったです。ツアーの最後に、参加してくれた学生から「日本に対する印象が変わった」、「研修に来てよかった」、「今後は日本に留学したい」と言ってもらい、この仕事にやりがいを感じました。そして、これからもっと面白いツアーを企画しようと思いました。
6.コロナ禍の中での対応
この2年間、学生の日本への留学は困難な状況だったので、現在はオンラインで事業を展開しています。大学からの要望に応じて、オンラインツアーを企画し、中国で販売しています。特に、今は日本人学生の交流を重点においています。新型コロナウイルスが流行する前は、実際に来日して、京都の教室で授業を受けたり、文化体験したり、肌で体験する内容が多かったので、オンラインツアーは苦戦しました。どうしても体験のリアルさがなくなるので、いかにオンラインでも学生に面白く感じてもらえるかを考えながら、講師の喋り方やテンポなど細かいところも改善しています。
7.起業してよかったとこと
昔からお世話になっている知り合いに、「君はまだこの事業を継続してやっているのか、応援している」と言われときはとても嬉しかったですね。10年間続けてきたことがこういった形で評価されたことにやりがいを感じます。
8.日本で起業する際のアドバイス
まず、自分の関心はどこにあるのか、ほんとにやりたいことは何か、そして、そのやりたいことが社会にどんな貢献ができるのか、ということを明確した方がいいと思います。そして困難があっても、簡単に諦めずにやり続けることが大事です。
9.将来の目標やビジョン
今も留学生と日本社会にはまだまだ壁があると思います。私が留学生の頃も、日本の文化や生活習慣になじむことができず、社会人になっても理解できないことが多々ありました。しかし、長い間日本で過ごしているうちに、日本人はなぜこのように考えるのか、行動するのかが分かるようになり、まだ日本の生活に上手くなじめていない留学生に教えることができるようになりました。そういった意味で、我々は日中文化の架け橋、カルチャトランスレータとして、留学生コミュニケーション事業を展開しています。今後も分断されない社会を作ることを我々の目標にして、大学生のオンライン見学事業を含めて、たくさんことに取り組んでいきたいと思います。
10.京都国際観光大使になったきっかけ
私はもともと留学生の会の会長でした。当時は会員5000人だった留学生の会は、今は倍になって、1万人にもの留学生が所属しています。当時から、どうやって京都の魅力を海外に発信して、より多くの留学生を京都に来てもらえるのか、を日々考え、それを評価していただいて、このような立派な名前を頂戴できました。
11.京都の魅力
よく、町の歴史や、文化、景色などが京都の魅力として挙げられます。もちろん、そういったものも魅力的ですが、一番の魅力はやはり京都の方々ですね。留学生の頃から、京都の方の温かさに何度も支えられました。起業してからも、たくさん応援してもらいとても励みになりました。京都は、人と人のつながりが非常に大切にしているように感じます。みんなで支えあって、励まし合うという風土があるので、私にとってこれも魅力の一つです。
12.起業に興味のある学生へメッセージ
大学四年間でいろんなことチャレンジをした方がいいと思います。自分が向いているものは何なのか、何が好きなのか、逆に何が嫌いなのか、それをはっきりした方がいいと思います。また、学生のうちに起業してもいいと思います。壁にぶつかったっても落ち込むのではなくて、常にいろんなプランを考えてチャレンジして、前に進むべきです。学生だったらまだ若いので、ダメでも就職するという選択肢があります。とりあえず自分がほんとにやりたいことが明確になるまで、いろんなことを積極的にチャレンジした方がいいと思います。
*本インタビューは個人の見解を述べるものであり、現在の勤務先、また過去の勤務先の見解ではありません。