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株式会社日本投資環境研究所 張様

1996年立命館大学経営学部卒業後、日興證券( SMBC日興証券株式会社)に入社。投資家向け企業調査レポート作成や株式公開を目指すベンチャー企業のサポート業務等に従事。その後2004年国際投信投資顧問(現 三菱UFJ国際投信)に入社。日本およびアジアの企業調査、中国株ファンドマネージャー、投資信託の商品開発などに従事。2021年日本投資環境研究所に入社。

1.ベンチャー企業に投資する際に時に重要視しているところ

 私は証券会社、資産運用会社で20年以上、投資対象として魅力的な成長性の高い企業の調査などを行ってきました。これまでの経験を踏まえて、ベンチャー企業などの成長性を評価する上で重視していたポイントなどについて述べていきたいと思います。

 まず確認するのがその会社の事業内容です。そして彼らのコアとなる製品、テクノロジー、サービスを活用できる市場の成長ポテンシャル、その市場で当該企業がどれぐらいの成長が期待できそうなのかというところを見ます。

重要なのはビジネスモデルがしっかりしているかどうかです。その企業の製品やサービスを、誰に対してどのように提供し、その対価として得た利益で事業活動を継続できる体制が整っているかどうかを見ます。企業なので、技術を生かして製品やサービスを顧客に提供し、それで利益を獲得できる仕組みが整っているかどうかが大事です。

 また、ベンチャー企業では経営者の影響力が大きいので、彼らの考える経営戦略、経営ビジョンの確認も重要です。彼らが提供する製品、サービスが対象とする市場規模は今どれくらいあって、今後どのくらいの規模にまで拡大すると考えているのか、その中で自分たちの企業はどのくらいの市場シェアを取りたいのか、それを実現する上での自社の特徴、強みは何なのか、企業として目指すあるべき姿はなどのようなものか、それを実現するための具体的な方向性や将来ビジョンは何か、などです。市場の成長性について、企業側と我々とで評価が異なることもあります。企業側は自分たちの成長性を過大評価しすぎる場合がありますが、我々の想定以上に市場が拡大したり、競争力のある製品、サービスを発明して我々の想定以上に成長する企業もあります(笑)。経営者の市場環境に対する見方が妥当かどうか、経営者の人となりや経営者としての資質はどうかについても重要視します。

 ベンチャー企業が提供する製品やサービスのベースとなっているテクノロジーは最先端のものが多く、これら最先端テクノロジーを活かした製品、サービスの市場規模が今後どれくらいの規模になるのかを予測するのは難しいと思いますが、金融業界の人間としては市場の成長ポテンシャルがどれくらいかは把握しておく必要があります。この市場が伸びていく裏付けとなるような定性的な情報、その分野の特徴などの情報は会社側との面談などを通じて探っています。

 重要なのはテクノロジーやアイデアをいかにビジネスに結びつけることができるかというところです。企業のコアとなるテクノロジーを商品化したり、アイデアをサービスに具現化していろんなところに売ったり、提供したりしていくことが必要になってきます。それに必要な人材を集める必要があります。ビジネスにさせるためには、営業に強い人や経営に関するノウハウを持っている人が不可欠です。今はまだビジネスとして立ち上がっていないですが、こういう理由でこの分野は伸びますから、我々の製品やサービスを使ってくれませんかというふうに、潜在顧客を訪問して自社製品、サービスの特徴、強みなどをアピールできる人が必要です。そして、自分たちの製品、サービスを適正価格で提供して、しっかり利益を確保できる収益構造にするためにも金融財務に強い人も必要です。

 そういった人たちを集めることがやはり重要だと思います。また、金融業界の人に対して、自分たちのテクノロジーの特徴や成長性、それを活かした事業内容、今後の成長戦略とそのために必要な資金額などを説明する人も必要かと思います。

ビジネスとして回していくには、テクノロジーに詳しかったり、アイデア持った人だけではなく、経営や、財務、営業などができる人も、最小限必要だと思います。

 2.成功する人の共通点

 まず言えるのが強い意志を持っている人ですね。例えば創薬関連のバイオベンチャーだと、いまだ有効な治療方法がない疾患分野に関する新薬開発やそれをサポートする機器、システムなどの開発に一生懸命頑張りますとか。なにかしらの社会問題を解決するために自分が自信を持っているテクノロジーを製品として具現化し、ビジネスを成功させていくために頑張るという強い意志を持っている人がやっぱりすごいですね。

 そして、時にはリスクを取った上での大胆な意思決定ができるかどうかもポイントです。事業の業績は経営者の意思決定の連続で決まります。経営者がその都度、複数ある選択肢の中から的確な選択肢を選びそれを実行していけるかどうかです。資金に制約があるなかで今後の事業展開ついてプランAとプランBという2つの選択肢があったとします。プランAであれば失敗リスクは低く、当面は普通にやっていけると思うが、差別化を図りにくく長期的な競争優位性を確立できるかどうか不透明、もう一方のプランBは、失敗リスクは高いものの、成功すれば大当たりして得られる成果は大きく、競争優位性を確立できる可能性も高い。冷静に今自分たちが持っている経営資源などを考えればプランBを選択しても勝算が高いとしても、人によっては失敗した場合の影響を気にし過ぎてしまうことがあるかと思います。躊躇するか、それとも強い意志を持って、リスクが高いけれども成長性が高いプラン、選択肢を選ぶことができるかどうか。頭では成功できそうだとわかっているけど、失敗した場合のリスクも踏まえた上で実際にそれをやるのかという決断、意思決定ができるかどうかというのはまた別のものです。

 実際に成功している起業家の人にお会いして話を聞くと、その都度の的確な意思決定と必要に応じてリスクを取った上での大胆な決断が行えるかが重要だとよく聞きます。もちろん意思決定にあたってはリスク要因や勝算がどれくらいあるのかについての冷静かつ慎重な分析が必要であることは言うまでもありませんが、重要な意思決定を迫られたときにちゃんと決断できるかどうかというのが重要です。

さらに言うと、スタートアップの企業ほど経営者の影響力は大きく、社員を含めいろんなステークホルダー(利害関係者)を巻き込んでビジネスを進めるにあたって、その経営者にリーダーシップがあり、他の人がついてくるような統率力やカリスマ性みたいなものがあるかどうかというのも、重要なポイントですね。非常に大事です。

3.起業するためにやっておくべきこと

 起業したい人に対して僕が一番おすすめするのは実際に起業した人に会っていろいろ話を聞くことです。というのは、授業の科目で企業論とかベンチャー経営論とかがあるかもしれないですけど、実際にリアルの企業の現場での大変さや、やりがいなどの情報は、実際に起業を経験して働いている人の話を聞くのがいいと思っています。実際に私がこれまで企業調査や資産運用の仕事をしていた中で、企業のビジネスモデルやその企業が手掛けるビジネスの成長性、その企業の投資魅力などに関する情報を最も多く得ることができたのは、実際の経営者、あるいはマネジメントチームの人たちとの面談でしたので、自分の仕事の経験からして、リアルな情報というのは、本を読むより、現場で実際に働いている人から直接聞いた方がいいと思います。

 一方で、起業するということは世の中の仕組みを知る必要があるので、大まかな世の中の流れとか経済や金融の流れについても知っておいた方がいいと思います。そういった意味では、例えば日本経済新聞などの経済、金融に関する新聞等に毎日目を通す習慣をつけておいた方がいいと思います。あとは起業する上で、技術的なこと以外に企業経営や財務についてある程度知っておく必要がありますので、そういったことに関する知識とかの書物には目を通しておいてもいいのかもしれません。ただ優先順位的には、実際に企業で働いている人たちの話を聞く機会があればどんどん聞いた方が一番いいと思います。

4.起業に興味のある学生へのメッセージ

 まず学生の皆さんは、起業を検討するにあたって、そもそもなぜ就職するのではなく起業するのかということを自分の中でしっかり考えてほしいと思います。

 就職するか起業するかという二つの選択肢がある中で、どうしても起業したいのかという理由を自分なりに見つけて欲しいと思います。起業家の人たちの中には、まず就職をして、そこで何か学んだことや得た経験をもとに起業した人たちもいます。何もないところから自分のアイデアをベースにビジネスを開始したり、大学などの研究機関等で研究してきたテクノロジーなどをベースにビジネスを開始したり、最初はどこかの会社に就職をして、ビジネスの仕組みとかを知った上で起業するなど、選択肢はいくつもあるので、自分はどのような選択肢を選ぶのか、じっくり考えてほしいと思います。

 そのためにもいろんな社会人に会って、自分の納得できる話を聞けるまではできるだけ多くの人に会って話を聞いてもらえればなと思います。やはり自分の見聞きした情報をもとに、自分の進路を決める人が多いので、その判断材料は多い方が良いかなと思います。幸い立命館大学の卒業生には積極的に後輩の進路相談に対してサポート活動をしている人が多く、これは立命館大学の強みだと思います。もちろんOBOGにコンタクトするのは、最初は心理的ハードルが高いかもしれませんが、しかし一般的に言って成功している人は他の人があまりやっていないことをやっていることが多く、そういった意味では、進路選択や社会人として成功するためには、他の人がまだやっていないことを、誰よりも早くやってみるということは自分にとってプラスになると思います。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

*本インタビューは個人の見解を述べるものであり、現在の勤務先、また過去の勤務先の見解ではありません。

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