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一般社団法人インパクトラボ 上田社長

熊本県益城町出身。  
立命館学園内に設立された「立命館SDGs推進本部」のイノベーション・オーガナイザーとして、小学校から大学院まで全てのSDGs推進及び社会起業家育成を行う。  
また自身でも一般社団法人インパクトラボを立ち上げ、自治体と連携し、SDGsに関する業務を担当している。

1. 起業したきっかけ

 大学生の時にSDGsに関する学生団体を立ち上げましたが、その規模が大きくなり活動の収集がつかなくなってきたので卒業するときに非営利の法人として起業しました。

2.就職ではなく起業できた理由

 一言でいうと運がよかったですね。私が立命館大学を卒業するときに、ちょうど立命館SDGs推進本部ができました。立命館大学のSDGsの取り組みが全国の大学と比べて進んでいるような感覚があったので、わざわざ別の進路選択をするより、そのまま立命館に残ってSDGsに関する取り組みをできた方がいいなと思っていました。SDGsに代表される社会課題をビジネスを通じて解決するということにも注目が集まっており、SDGs推進本部の中でも社会起業家を育成したいという声が上がっていました。そこで、実際に自分が起業を経験することで、そのプロセスで自分が困ったことや大変な経験などを将来、起業をしたいと思っている人に身をもって伝えることができると思い、起業に踏み切りました。

3.日本のSDGsの現状

 最近は、SDGsが大企業の広報として使われ過ぎているのではと感じています。SDGsには、社会問題をどのように解決していくかという視点で、Transform our worldという言葉があります。社会全体がダイナミックに変革しなければいけない。例えば、大企業もその企業のカタチで永遠によいのかという課題があると思います。SDGs達成のためのドライビングフォースとして大企業もよいですが、社会的にインパクトを与える1として、スタートアップの力も必要だと思っています。

 他にも投資の世界では、ESGなどの新しい観点が注目されています。私自身5年ほど前に東京でSDGsの話をしてもスタートアップ界隈には響いていませんでしたが、今ではそれが当たり前になってきているので時代は着実と前に進んでいるなと感じています。それでも進み方はゆっくりだと思いますので、思った以上にダイナミックな変化は起きないと感じてます。

 またSDGsは儲からないというイメージがあるとよく言われますが、私はSDGsは儲かるようになっていくと思います。社会問題は山ほどあるので、その問題を解決する市場は必ず存在し、別の問題が発生した時はまた新しい市場が生まれます。今はカーボンニュートラルが世界的な共通アジェンダになり各国、各地域のリーダーたちが人やお金を動かしながら、様々な政策や支援をしています。それによってこの分野での市場が盛り上がり、投資のお金が動いていると思います。

4.日本が抱える一番の問題

やはりジェンダー問題が一番だと思います。女性活躍の場面が少ないなと感じることが多いです。逆に意図的に女性を前に出そうとしているケースもある。これまで意思決定などを男性の大人が決め続けると、画一的でどんどんつまらない世界になると思っています。

5.会社のこだわり

「Learning by doing」をモットーにしています。とにかく行動しながら学ぼうという意味です。できないことや難しいから人が手を出さないと分かっていることでも未来への投資だと思って、私たちが率先してチャレンジしてみる。私たちがチャレンジしたから見えてくる意味や価値があると信じています。普段からメンバーにもよく「Learning by doing」のスタイルでやっていこうと伝えています。

6.苦労した点

私は、所属が立命館大学生命科学部だったので経営の知識が全くないところから起業にチャレンジした点です。それと出身が熊本県で、滋賀県に縁もゆかりもない状態だったので、人脈もほとんどゼロからスタートで苦労しました。起業家の中には、親族がもともと会社を経営していて、第二創業的な起業家もいます。それはそれで大変意義があると思いますが、そのような人がメディアに出て、うまくやっていると自分には無理なんだとあきらめてしまう話もよく聞きます。そこで、自分は自分だと割り切って行動に移すことが重要だと思います。

7.学生時代にやっておいてよかったこと

立命館大学が実施しているEDGE+Rプログラムに参加したことですね。そこでは実践的にイノベーションの方法などを教えてくれるのですが、一緒に活動をしていたメンバーから経営や経済などの話を聞くことは大変良い経験だったと思います。初めは何を言っているか全くわからなかった内容ですが、それでも他学部の学生とイノベーションについて熱く意見を交わせた機会はとてもよかったです。早いうちにいろんな学問や歴史、教養などを学ぶことは重要だなと感じています。

8.起業家に向いている人

起業家教育をしていて実感したことは、基本的に起業家は社会の外れ値なんですよね。偏差値では表現することが難しい、特異点です。そのような特異点な人を育てるのは大変ですが、なんとなくわかってきたこととして、その人の周りの環境が大事だと思っています。大学生のキャリアで大企業を希望する人と起業を希望する人にはそこまで能力的な差がないです。むしろ周りにいる人や環境が重要であって、雰囲気的に起業しやすいところにいる人が起業してると感じています。例えば、経済的な事情や周りの人の理解がその例です。自分の原体験をもとに負のエネルギーを力に変えて起業する人も一定数いますが、立命館大学ではあまり多くない印象です。

立命館大学に在籍している場合、起業家育成プログラムに参加して仲間を増やし、起業しやすいコミュニティに入ることをオススメしています。あとはインターンなど行って現場から会社がどのように動いているか知ることも大事だと思います。付け焼刃的なインターンではなく、早い時期から経験をしておくことは重要です。特に、まだ規模が小さいスタートアップなどは、どのように会社が動いているかがよりリアルにわかると思います。そこに、積極的に関わって欲しいです。

9.今後の目標

インパクトラボは、回転扉(リボルビングドア)みたいなことができたらなと思っています。自分たちだけで何か価値を生み出す以上に、大学とコラボレーションしたり、行政と組むのが得意なので、一緒に社会共生価値を高めていきたいです。

個人的に行政の政策にも興味がある。政策の視点からイノベーションを起こしたいと考えています。 そういう視点では、政治にも興味があります。そのために行政や大学などの公的機関と一緒に仕事をさせてもらっています。

10.政治家でないと変えられないことはあるのか

ちょっと先の目標に熊本県知事になるというのがあります。知事には予算の組み方にある程度の権限があるため、高齢者を対象とした政策か、未来への投資を重視した政策か、ソフト面やハード面に予算を割くかなど比率は、皆さんが住んでいる都道府県の知事によって大きく変わります。今は、起業家としてコツコツ実績を積みながらですが、いずれは大きい仕組みを動かすことができるようになりたいと思っています。

11.学生にメッセージ

まずは何かやってみることですね。自分が社会を変えたいと思うなら一度小さくてもいいのでアクションを起こすことが大切です。想定通りにうまくいかなかったとしても、何が問題なのかを分析して改善、改善を繰り返してちょっとづつできることを増やしていくことが重要です。

 最近、ピッチイベント観ていても、PowerPointの資料だけきれいになっていく人が多いです。それよりも泥臭くそれこそBeyond Bordersのように行動しながら、どんどんチャレンジしていく。世間では、「社会実装力」と呼ばれますが、そのような力を若い学生の皆さんにこそ身に着けてもらいたいです。


*本インタビューは個人の見解を述べるものであり、現在の勤務先、また過去の勤務先の見解ではありません。

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